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ロシナンテの背中

12300;卒業式、絶対来るんでしょ?」. コンピュータが全部止まるかもしれないと騒がれた2000年が、ミレニアムの祝賀ムードのなかで無事に明けたころ、ツツミくんも、ナカオくんも、ダイちゃんも、タムラさんも、イトウさんも、会うたびに卒業式への出席の可否を僕に確認していた。ひーちゃんはいつものようにどこにいるのか分からなかったが、彼らと同じように思っているに違いなかった。もちろん僕だって、絶対に行って笑いの一つでもとってやろうと思っていたので、卒業演奏会の翌日。わざわざ和装までして、K音大の講堂に向かったのだった。 広大な墓地がいきなり広がる玉川上水の駅前を、赤や白のおめでたい色に身を包んだ卒業生たちが列をなして歩いていた。作曲科のみんなは僕の姿を目にすると、手を叩いて笑っていた。掴みはOKである。 僕たちは先生たちと懇談し、いよいよ謝恩会は締めくくられることになり、僕は教授になんとお礼を言うべきか、刹那に考えを巡らせた。「お世話になりました」という言葉は皮肉として受け取られる危険性もあったが、しかし ...そう言うと、破顔一笑という四字熟語を見事に体現した顔をして、教授...

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12300;卒業式、絶対来るんでしょ?」. コンピュータが全部止まるかもしれないと騒がれた2000年が、ミレニアムの祝賀ムードのなかで無事に明けたころ、ツツミくんも、ナカオくんも、ダイちゃんも、タムラさんも、イトウさんも、会うたびに卒業式への出席の可否を僕に確認していた。ひーちゃんはいつものようにどこにいるのか分からなかったが、彼らと同じように思っているに違いなかった。もちろん僕だって、絶対に行って笑いの一つでもとってやろうと思っていたので、卒業演奏会の翌日。わざわざ和装までして、K音大の講堂に向かったのだった。 広大な墓地がいきなり広がる玉川上水の駅前を、赤や白のおめでたい色に身を包んだ卒業生たちが列をなして歩いていた。作曲科のみんなは僕の姿を目にすると、手を叩いて笑っていた。掴みはOKである。 僕たちは先生たちと懇談し、いよいよ謝恩会は締めくくられることになり、僕は教授になんとお礼を言うべきか、刹那に考えを巡らせた。「お世話になりました」という言葉は皮肉として受け取られる危険性もあったが、しかし&#12...そう言うと、破顔一笑という四字熟語を見事に体現した顔をして、教授...
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1 ロシナンテの背中
2 澄んだ空気と青空の広がる卒業式の日であった
3 作曲科の主任、ウザキ教授が音頭をとって乾杯した
4 しかし彼は科の主任として、僕の困った言動に困ってきたに違いなかった
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ロシナンテの背中,澄んだ空気と青空の広がる卒業式の日であった,作曲科の主任、ウザキ教授が音頭をとって乾杯した,しかし彼は科の主任として、僕の困った言動に困ってきたに違いなかった,kenichi nishizawa,0 件のコメント,メールで送信,blogthis,twitter で共有する,facebook で共有する,pinterest に共有,前の投稿,登録 投稿 atom,このブログについて,作曲家・西澤健一ウェブサイト,01「アイヴズに夢見る」,08「m先生の思い出」,10「へなちょこパンチ」
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12300;卒業式、絶対来るんでしょ?」. コンピュータが全部止まるかもしれないと騒がれた2000年が、ミレニアムの祝賀ムードのなかで無事に明けたころ、ツツミくんも、ナカオくんも、ダイちゃんも、タムラさんも、イトウさんも、会うたびに卒業式への出席の可否を僕に確認していた。ひーちゃんはいつものようにどこにいるのか分からなかったが、彼らと同じように思っているに違いなかった。もちろん僕だって、絶対に行って笑いの一つでもとってやろうと思っていたので、卒業演奏会の翌日。わざわざ和装までして、K音大の講堂に向かったのだった。 広大な墓地がいきなり広がる玉川上水の駅前を、赤や白のおめでたい色に身を包んだ卒業生たちが列をなして歩いていた。作曲科のみんなは僕の姿を目にすると、手を叩いて笑っていた。掴みはOKである。 僕たちは先生たちと懇談し、いよいよ謝恩会は締めくくられることになり、僕は教授になんとお礼を言うべきか、刹那に考えを巡らせた。「お世話になりました」という言葉は皮肉として受け取られる危険性もあったが、しかし&#12...そう言うと、破顔一笑という四字熟語を見事に体現した顔をして、教授...

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ロシナンテの背中: 01.「アイヴズに夢見る」

http://www.rocinantenosenaka.blogspot.com/2012/12/1.html

う、ある方の記事を読んで、僕は自身のことを振り返った。僕もまた、記事を書いた彼と同じよう. 母が好んで聴いていたのは、ビリー・ヴォーンに、ペレス・プラー. ドに、サンタナ、ベンチャーズ、美空ひばり。父の好みはよく分か. らないが、都はるみが(一旦)引退したときに全集のレコードを買. っていて、僕は子供ながらに驚いた。まあ、悪いものを聴いていな. いとは言えるが、一般的な「音楽好き」以上ではなく、年中レコードのかかる家というわけでもなかった。 宏美の「聖母たちのララバイ」と、イモ欽トリオ。 ここは昭和60年代に差し掛かろうかとしていた埼玉県狭山市である。駅の近くにあったデパート「ニチイ」のなかのレコード店で、「な. んか欲しいのあるか」と父に聞かれ、僕は無自覚にも「小・中学生のためのク. ズを指差していた。低学年向けのテープには「おもちゃの交響曲」やルロ. イ・アンダーソン、「ジャマイカ・ルンバ」が、そして最後の中学生向けテープにはリストの「前奏曲」やマーラ. ーの「さすらう若人の歌」なんかが入っていた。 すりながら、通路を挟んでレコード店の向かいにあった「北欧」と.

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ロシナンテの背中: 05.「18歳の夏」

http://www.rocinantenosenaka.blogspot.com/2012/12/18.html

まり理由は聞かないで頂きたいのですが、とにかく、ぐきっ、と逝. 院することになった。うち最初の2週間は寝たきりだった。「ギリ. ギリだったねぇ。あ、いま立ち上がったら半身不随決定だから。」. と病院の先生に脅かされ、最初の数日間こそ、どうしよう、どうし. ら、そうだよなぁ。と、つぶやいていた。 である。目が覚めた時の切なさったら、ない。とは言え、もちろん. 良い時代であった。(…あ、当時未成年か、おれ。まあいいよね、. もう時効だし。)切りに行けない髪の毛も、この頃が最長記録で、. ことと言えば、トイレとお風呂。僕は「介護される側」を18の若. ので体を拭いてもらうのだけど、「…すみません…わたし…若い人. の体を拭くの…はじめてなもので…」というシチュエーションがや. ざ経験すると、これは困るのだ。とっても困るのだ。なにしろこっ. って欲しいのだ。けれど僕の方が「あの、気にしないでください。 ええ、その後、もちろん何もありませんでした。 12288;1978年東京生まれ。15歳よりピアノを始め、. 音楽現代」(芸術現代社)誌上にコラムを連載中。 さん Powered by Blogger.

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ロシナンテの背中: 11.「ガミさん」

http://www.rocinantenosenaka.blogspot.com/2012/12/blog-post_2058.html

12300;M先生の思い出」という文章を先に書いたが、K音大作曲科にM先生は3人もいたので、このタイトルは物書きとして少々迂闊だった。マスダ先生の他に、ドイツ人のマイヤー先生。もうひとりはミゾカミ先生。このミゾカミ先生は僕の先生だったのだから忘れるわけにはいかない。でも、僕たちは彼のことをこっそりと「ガミさん」と. 僕たちもちゃんと「増田先生」と呼んでいたけれど、こちら. のミゾカミ先生は「ガミさん」だった。「溝上先生」の「上」の字には濁. 点がないので本来なら「カミさん」と言うべきなのだが、なぜか「. に作曲させてくれるよ」と酒の席で聞いたので、それならば、と、. 僕の学年では、僕と、ひーちゃんと、ダイちゃんの3人が、彼の生徒だった。 ち3人はガミさんの到着を待っていた。「ガミさんは、とにかく遅. 長かった。のっそり、のっそり、じわり、じわりと近づいてくるガ. チに座りなおすこともできず、ダイちゃんは「気まじぃー」と小さな. 声でつぶやいて、ひたすら彼のゴールを待っていた。親分の到着を待つ子分そのものの姿であった。 12290;もちろん、僕は出場していない。 さん Powered by Blogger.

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ロシナンテの背中: 03.「即興の日々」

http://www.rocinantenosenaka.blogspot.com/2012/12/blog-post_19.html

桜の咲くK音大の構内は歓声にあふれていた。入試直前の講習会では僕の隣に座って一緒に和声のレッスンを受けていたナカオくんがいた。入試の時点で意気投合して試験の帰りに一緒にモスバーガーを食べたダイちゃんもいた。僕たちは健闘をたたえあった。作曲科は1学年に10人しかおらず、受験生も15人から20人程度なので、入学式の時点で僕たちはすっかり顔なじみなのである。 うに不安だった。高校2年から受験勉強を始めた僕は、自分の能力で追いついて行けるものなのか、どうにも確信が持てなかった。 ツツミくんはジョン・ゾーンが好きだった。僕は周知の通りアイヴズ好きである。となれば、ちょっと即. 12290;こんな贅沢なおもちゃが世の中にあろうか。二人で二台のピアノを弾くと、それはそ. なんとなく決まった「型」が出来てくる。僕は、ある程度は素材を. がら、聴きながら、二人で腹を抱えて笑い転げていた。もうそのよ. 熱中した。そんな中で偶発的に生まれた「へなちょこパンチ」とい. 玄関のドアが思い切り蹴られたりした。やばい、と、その瞬間は静. とにかく、僕は毎日、本気でふざけていた。 さん Powered by Blogger.

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ロシナンテの背中: 04.「中退記念日」

http://www.rocinantenosenaka.blogspot.com/2012/12/blog-post_8141.html

て「あのぉ、中退したいんですけどぉ…」と、おそるおそる尋ねて. みた。そうしたら「あ、ちょっと待っててくださいねー」と窓口の. 女性が一枚の紙切れを取り出して、「ここね。ここに学籍番号と、. 名前と、あとハンコ。書き終わったら持ってきてください。」僕はその. 12300;はいはい、確かに。ありがとうございましたー。」. この「ありがとうございましたー。」ほど、僕が興味深く聞いた「. ありがとうございましたー。」は無い。15年経った今でも、これ. 以上の「ありがとうございましたー。」は無い。僕はてっきり「本. 気!?どうして!?考え直してよ!!」みたいなことを言われ. るかと思っていたのに、「姐さん、止めてくれるな、オレは本気な. んだぜ。」みたいなことを言おうと思っていたのに、そんな熱いパ. ああ、大学って、やっぱり商売なんだなぁ、と、しみじみと思った. 12289;書類を提出した足でミゾカミ先生に報告すると、「え?」と、北九州市あたりで1回くらいは拳銃を撃ったことのありそうな風貌の先生が、豆鉄砲. 12288;1978年東京生まれ。15歳よりピアノを始め、. さん Powered by Blogger.

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